歴史が面白い53

令和2年7月24日~7月28日

  <7月24日>

第2波対策と経済両立。ドイツと英国において、新型コロナウイルス対策で新たな戦略を打ち出した。経済に深刻な影響を与える国全体が対象のロックダウン(都市封鎖)を避け、小規模な地域封鎖を機動的に実施することが柱だ。独英の新戦略は検査態勢の充実で感染の広がりをより正確に把握できるようになったことで実現した。ドイツの首相府のブラウン長官は16日、「より早く、細やかに、そして的確に」と連邦政府と各州政府で合意した新しいロックダウン戦略についてこう説明した。ドイツはこれまで人口10万人あたりの新規感染者が50人を超えた都市や郡を対象にロックダウンを実施していた。ただ、都市や郡全体の封鎖は地域経済への影響が甚大だ。さらに行政裁判所が7月、同じ郡だからと言って感染者のほとんどいない町まで封鎖対象にするのは公平さを欠くとして措置を無効にする判断を下していた。新たな戦略では、高齢者施設や食肉加工工場、宗教行事などでクラスターが発生した場合、まずは感染経路を特定し関係者の自宅隔離や検査などを進める。検査で陽性と判明する前でも、自宅隔離を命じられるようにする。さらに広がりをみせた場合でも都市や郡全体を対象とするのではなく、感染が想定される地域だけをロックダウンの対象とする。状況によっては感染地域からの出入りを原則として禁じ、48時間以内の検査で陰性だったという証明書なしに旅行できないようにする。ドイツの検査件数は1週間で53万件、検査能力は同118万件に及ぶ。高い検査能力で感染状況を把握できるからこそ、きめ細かな制限を導入し、解除も素早く判断できるというのがドイツ政府の考えだ。

英国も同じ道を歩み始めている。ジョンソン英首相は19日、英全土での都市封鎖について「核抑止力のようなものであり、放棄はできないが、使いたくない」と語った。地域ごとの機動的な封鎖と週350万件の検査態勢構築で第2波封じと経済の再始動を狙う。英政府は18日から人口約85%を占めるイングランド地方自治体に特定の施設や空間の閉鎖、イベントの中止などを命じる権限を与えた。それでも感染が止まらなければ、国が感染が拡大した自治体全体に対して店舗の営業停止や外出制限を命じる方針だ。すでに地方都市レイターの封鎖が実施された。検査態勢も大幅に拡充する。現在1日20万件以上の検査能力がある。これを10月末までに1日50万件まで増やす。

 (日本経済新聞 7月25日)

 

世界新規感染、最多28.3万人新型コロナウイルスの世界の新規感染者は23日、28万3千人と過去最多となった。拙速な経済活動の再開に踏み切った米国やブラジル、インドの3カ国でそろって感染者が高止まりしており、世界的な感染拡大の勢いは加速している。(同)

 

  <7月25日>

感染再拡大 3つの懸念。感染再拡大が顕著になってきた新型コロナウイルスへの備えに懸念が広がっている。感染情報を共有する国のシステムは新規感染の半分を占める東京と大阪が参加していないので全国の感染動向を迅速に把握できない。市中感染の広がりを示す陽性率が上昇している。無症状者や軽症者の一部などホテルや自宅で療養する人を除く入院者数が増えている。(日本経済新聞 7月26日)

 

  <7月26日>

新規感染 首都圏以外6割。首都圏以外でも新型コロナウイルスの感染拡大が鮮明になっている。東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏以外の占める割合は2週間前は2割程度であったが、26日には6割に達した。東京に続く形で感染者が増えてきた大阪、名古屋、福岡といった大都市でも、活動が活発な若い世代の感染が目立つ。(日本経済新聞7月27日)

 

米失業給付、大幅減額に。米政権の新型コロナウイルス対策が期限を迎える「財政の崖」が迫っている。現状で2500万人に月600億ドル(約6兆円)を支給する失業給付の特例は7月末で終わる。米議会は追加経済対策に給付延長を盛り込むものの、大幅に減額する方向だ。コロナ危機前の失業給付は週で370ドル程度、それが週600ドルの上乗せで今では1000ドル近い。(同)

 

  <7月27日>

布マスク配布 今後さらに8千万枚。政府が新型コロナウイルスの感染防止策として始めた布マスクの配布事業で、介護施設保育所など向けの布マスクの発注と製造が続き、今後さらに約8千万枚を配る予定であることが厚労省などへの取材で分かった。現場からは「すでに店頭でのマスク不足も解消されて久しく、必要ない」との声が上がっている。(朝日新聞 7月28日)

 

  <7月28日>

新規感染 最多967人。全国で28日に確認された新型コロナウイルスの新規感染者が967人と過去最多を更新した。東京都は266人、大阪府で155人、愛知県で110人などとなり、大阪府と愛知県は過去最多を更新した。(日本経済新聞7月29日)

 

軽症者用ホテル2150室に。東京都は28日、新型コロナウイルス対策で軽症者らを受け入れる宿泊療養用のホテルを7月中に約1480室を追加すると発表した。すでに670室を開設しており、合計約2150室となる。29日に新宿、中央区内の「東横イン」で計約560室、31日に港区にある「品川プリンスホテル イーストタワー」で約920室を用意する。(同)

 

ワクチン開発・製造 分業新型コロナウイルスのワクチンの大量供給が課題となるなか、開発と製造の企業間分業が進んでいる。富士フィルムホールディングスは28日、米製薬会社など向けにつくる原薬の生産能力増強を発表した。新型コロナウイルス向けのワクチンは開発と生産を異なる企業が担当する「水平分業型」が進む。生産受託会社の間では案件獲得競争が始まっている。受託最大手のスイスのロンザは米医薬ベンチャーのモデルナと、5月に契約を結んでいる。(同)

 

感染対策に大学発の技術。大学発スタートアップの技術を活用し、新型コロナウイルスの感染を防ぐ試みが広がっている。北大発スタートアップのAWLはAIの画像認識の強みを持ち、大人数の団体客の体温測定を0.1度の誤差でカメラ測定できる。札幌市内のドラックストアや複数のホテル、百貨店で導入されている。徳島大学発のナイトライド・セミコンダクターは発光ダイオード(LED)を使う殺菌器だ。徳島県鳴門市内の小中学校に3月168台の殺菌器が寄贈された。群馬大学発のグッドアイは、銅繊維に特殊な加工を施した殺菌・抗ウイルス性の高いシートを開発。製品開発で活用したのは「光触媒」だ。光触媒は光に当たると菌やウイルスを除去する力があるが、細かい粒子状のため伸縮性に乏しくマスクなどの素材には使いにくかった。そこで殺菌・抗ウイルス効果が知られている銅を細かい糸に巻き付けてシート状に加工し、その表面上に光触媒をコーティングした。同単体より1000倍の殺菌・抗ウイルスの効果が確認されている。(同)

 

 

(コメント)

ドイツや英国でも第2波対策として経済に深刻な影響を与える国や大都市を対象としたロックダウンを避けるようになってきた。そこで出てきたのが小規模な地域封鎖を機動的に実施することだ。同じようなことは、日本では法的規定がないためできない。東京都は最近の感染拡大を受け、感染が多い地域や業種に限った休業要請を検討している。

トップダウンで事を解決していく国と違い、地域地域で痛みを分かち合い、話し合いを通じて解決していく日本ならではの方法なのかもしれない。その場合、少々の痛みは我慢することになるが。