歴史が面白い59

令和2年8月11日とパンデミックの序章「下」 

  <8月11日>

GO TO 登録3割どまり。国内旅行の需要喚起策「GO TO トラベル」に登録した旅館・ホテルが全体の3割程度にとどまっている。大手旅行会社の商品に組み込まれていた旅館・ホテルなどが中心で、中小・零細の宿泊施設の登録は進んでいない。直接予約だと施設と旅行者の手続きが煩雑になるためだ。1兆円を超える巨大事業の恩恵が大手業者に偏りかねない。(日本経済新聞8月12日)

 

ロシア、ワクチンを承認。ロシアのプーチン大統領は11日、同国の国立研究所が開発した新型コロナウイルスのワクチンを承認したと発表した。世界で初めて、ただ国際的に承認に必要とされる大規模な臨床試験を完全に終了しておらず、安全性を懸念する声も強い。8月末にも医療従事者などへの接種を始める。2021年1月からは一般市民向けに接種も実施する予定。(同)

 

アビガン治験 来月完了新型コロナウイルスの治療薬候補「アビガン」の臨床試験(治験)が9月に完了する見通しである。(同)

 

デンカ、コロナ抗原検査器具。デンカは11日、新型コロナウイルスの感染の有無を診断する抗原検査キットを13日から医療機関向けに販売すると発表した。希望価格は10回用で6万円。(同)

 

7月の倒産 2%減東京商工リサーチが11日発表した7月の企業倒産件数は前年同月比2%減の789件だった。減少は2カ月ぶり。新型コロナウイルス対策の政府や金融機関の資金繰り支援が、経営の厳しい企業を一定程度支えているとみられる。(同)

 

米にワクチン1億回分。米バイオ医療ベンチャーのモデルナは11日、開発中の新型コロナウイルスワクチン1億回分の供給で米政府と合意したと発表した。政府は15億2500万ドル(約1600億円)支払う。追加で4億回のワクチンの購入権も確保する。米政府はこれまで、英製薬大手グラクソ・スミスクラインと仏サノフィ、米ジョンソン・エンド・ジョンソン、米ファイザーなどからそれぞれ1億回分の供給契約を取り付けた。(同)

 

 

 

<<コロナの時代(朝日新聞)>>

 

パンデミックの序章「下」

武漢封鎖の直後 見送った緊急宣言(7月7日)> 

 1月28日、中国国家主席習近平は北京の人民大会堂でWHO事務局長のテドロスを迎えた。「中国は一貫して透明性をもって情報を提供している」と語る習ニ、テドロスも「中国の対応の素早さ、規模の大きさはまれに見るものだ」と持ち上げた。

中国衛生当局の関係者はこの時のテドロス訪中について、「彼は訪中前、中国にとって大きな役割を果たしていた。習氏が出迎えたのは、そのねぎらいの意味もあった」と明かす。中国を喜ばせた役割とは何か。新型コロナウイルスのヒトからヒトへの感染が判明した段階で中国が懸念したのは、WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言し、中国との人の往来や貿易の制限を各国に勧告することだ。そこで中国政府は1月20日~21日にWHOの専門家グループを武漢に案内し、空港の検査や病院の隔離は万全だとアピール。22日からのWHO緊急委員会に向け、ウイルスの封じ込めは可能だと訴えた。

 

ジュネーブで22日にはじまった緊急委員会は、宣言を出すかどうかで委員の意見が割れた。会議後テドロスは中国からの報告について、「詳細さと深さに感心した」と評価したが、会議に出席した委員からは中国の情報や分析の精度を疑問視する見方が出ていた。中国が説明する「感染者」には無症状の人が入っていない上、ヒトからヒトへの感染は少数の疑い例を認めただけだったという。この段階で中国では600人近い感染が確認され17人が死亡していたが、専門家からは「ヒトからヒトへの感染が1週間以上前から起きている」との指摘が出ており、もっと多くの感染者がいるとの見方があった。結論は出ず会議は1日延長した。ちょうどその頃、WHOの背中を押すように中国が踏み切ったのは「武漢封鎖」だった。これがWHOの判断にどう影響したかは分からない。しかし、封鎖から数時間後に再開した会合で、テドロスは「緊急事態宣言は時期尚早」との結論を下した。

1月30日、結局、WHOは国際世論に押される形で緊急事態宣言を出したが、貿易や渡航の制限韓国は回避。中国は胸をなで下ろしWHOの対応を称賛した。

 

WHOへの加盟が認められていない台湾は、昨年末、原因不明の肺炎の発生が公表された直後、WHOに問い合わせをする一方、中国側に対しても武漢の状況を直接見せるよう強く要請。中国は拒否できず、1月12日~15日に台湾の医師らが武漢の病院などを視察することを認めた。このとき、中国はヒトからヒトへの感染を認定しておらず、WHOからも満足な回答はなかったが、台湾当局は「武漢から報告を受けた時点でヒトからヒトへの感染が起きていると判断した」と証言する。台湾は翌16日から武漢への渡航注意レベルを引き上げるなど水際対策を講じ、感染の封じ込めに成功した。