大吉日記

今まさに大きな歴史が動いている。新型コロナウイルス感染症の世界的な流行だ。毎日毎日新しいニュースが世界中から入ってくる。コロナの話は毎日、テレビや新聞に載っており、その時々はよくわかったつもりになっているが、後で振り返ると多分記憶がぼんやりとして、少し詳しく人に話せるものにはならないだろう。今まで起きた心に残るような大事件やイベントにおいてそうであったから、今回はそうならないように、毎日の新聞記事を中心に書き記しておきたいと考えた。

歴史が面白い126

令和2年10月18日と東京ー「夜の街」

  <10月18日>

ブラジルの都市で「集団免疫」成立か新型コロナウイルスの感染爆発が起きたブラジルのマナウス地域で「集団免疫」ができ、流行が下火になったとする研究論文が発表された。集団免疫は多くの人が免疫を獲得した状態で、一部の国が当初、対コロナ戦略として検討した。集団免疫ができたとしても免疫がどこまで持続するかは不明で、推移を注視する必要がある。

論文を9月に公表したのはブラジルのサンパウロ大学や英オックスフォード大学などの研究チームだ。別の専門家による査読の前の段階だった。現地の病院でコロナ以外の検査などで余った血液を用い、抗体検査などで過去の感染を調べた。アマゾン地域にあるマナウスは、3月中旬に患者が初めて報告され、社会活動を制限したが感染爆発が起きた。新規感染者数のピーク時に抗体保有率が44%に達した。その後制限を緩和したが新規感染者や死亡者が減り、流行は下火のままだ。最終的には感染した人の割合は推定で66%という。

感染症疫学の理論によると、新型コロナウイルスの感染力なら免疫を持つ人が人口の40~60%に達すれば流行は自然に収束に向かうとされる。

9月に英医学誌ランセットに載った論文によると、米国の透析患者の抗体保有率は高い地域で27.6%平均で9.3%、スウェーデン政府の調査ではストックホルムが12%、日本の調査では東京や大阪でも1%未満だった。

だが高い抗体保有率は感染拡大の裏返しでもある。マナウス地域では住民1000人に1人の割合で死亡した。死者が多い米国、当初から集団免疫を目指したスウェーデンでも同0.6人前後、日本では0.013人だ。(日本経済新聞10月19日)

 

 

東京ー「夜の街」の烙印と反発

 

コロナ戦記 山岡淳一郎氏 世界11月号から抜粋

 

東京都新宿区、34万5千人の人口は、昼間75万5千人に膨れあがる。そして夜は日本一の歓楽街、歌舞伎町に数多くの人がやってくる。疫学専門家の分析では、第一波、第二波ともに新宿が感染のエピセンター(震源地)になっている。新宿から大阪のミナミや福岡の中州などに感染が飛び火し、新たな震源地が形成される。絶えず人が行きかう新宿の感染制御は、東京都の最重要課題であった。

 

新宿区保健所所長の高橋郁美氏は傘下の保健師から「感染して体調を崩しているのに職業も接触者も言いたくない、と一切喋らない若者がいます。見た目から多分ホストだと思います。」という報告をうけた。

感染経路不明の患者が増えれば市中感染が起きる。高橋所長は「ホストクラブの情報は極めて重要」と受け止め、吉住健一新宿区長に状況を伝えた。

吉住区長は、歌舞伎町でホストクラブやバー、美容室など17店舗を経営し歌舞伎町商店街振興組合常任理事の手塚マキ氏に連絡した。二人は旧知の仲だった。

 

6月3日、手塚氏と後輩の経営者数名が新宿区役所を訪れた。最初は行政と関わったらロクなことにならない、素性を知られたらその店は嫌がらせを受け、廃業に追い込まれると心配していた。そこで、区役所の仕事は犯人捜しではない、人権は守る。区内で働く人、暮らす人の健康を守ることが区役所の仕事だ、と説明した。すると、その内容をSNSで広めてくれた。

翌4日、行政の対応に懐疑的なホストクラブの経営者を含めて二十数名の飲食業関係者が区役所に集まった。率直に話しているうちに都の批判が出た。新規感染者が多発している繁華街に「夜の街」の烙印を押し、都民に注意喚起、つまり近づくなとメッセージを発し続けている。都は億単位の広告宣伝費を使っていた。吉住区長はホストクラブ関係者から「(都に)対抗して安全だ。安心して来てくれ、メッセージを出してほしい」とたのまれたが、さすがにそれは言えない。しかしこのまま「夜の街」とひとくくりに彼らを排除したら感染はますます地下に潜り、いずれ爆発する。区と、ホストクラブやキャバクラ、バー、居酒屋など多職種が参加する連絡会を設けて、一緒に感染の拡大を抑えたいと願った。

5日、吉住区長は小池知事と面談する。都の姿勢は「押しつぶしちゃえ。夜の繁華街、ホストクラブなんてものは社会になくてもいいぐらいの感じ」だったという。

7日、区長は新型コロナ対策を担当する西村康稔経済再生担当大臣に会い、区と事業者との連携を説明した。西村大臣はその意見交換を踏まえて小池知事と会談し、記者会見で繁華街の感染防止策に踏み込む。「従業員への定期的な検査の受診」「プライバシーに配慮した相談窓口」「ガイドラインの策定」など、排除から協議へと国の方針はじわりと動いた。

現場では、高橋保健所長らが二次感染を防ぐため店をあげてPCR検査を受けてほしいと経営者を説得する。区長や保健所長から直接、ホストに行政の在り方や保健所の役割などを含めて説明したことで、ホスト側の態度が変わった。

 

 6月半ばには「新宿区繁華街新型コロナ対策連絡会」が発足し、区と事業者のプラットフォームができる。勉強会がひんぱんに開かれ、検査数は増えた。結果的に陽性者も増加したが仕方がない。

6月末ごろから全国の感染者は右肩上がりに増え、第二波が到来した。1万件程度だったPCR検査数も増えピークで3万件を突破すると20代、30代を中心に陽性者がどっと増えた。

 

東京は8月1日、472人と過去最高の新規感染者を出す。その間、歌舞伎町のホストクラブ約240店のうち感染が発生してPCR検査をした店が約50、集団検査に応じた店は約20、繁華街コロナ対策連絡会や勉強会に参加した事業者を含めると「7割ぐらいの店が感染対策に加わっている」と吉住区長は言う。歌舞伎町の感染者は徐々に減った。お客に連絡先を聞いて、感染者がでたらすぐに連絡できるという。「行政と一緒に活動できて実践知がつきました。もう陽性者が出てもあたふたしなくなりました」と手塚氏は言う。「発生源の当事者の理解と協力が絶対に必要」という和歌山県の野尻技官の言葉はここでも生きている。

 

 

(コメント)

新宿歌舞伎町の取り組みは関係者の努力に敬意を表したい。やはり信頼であり、分断でなく共同である。直近の新規感染を調べると、7月の後半から都内の新規感染は新宿一極集中ではなく分散してきている。もちろん感染源から周辺に拡散したとの見方もあるが、その後8月中旬より新宿が感染の一番ではなくなってきている。人口の多い区のほうが感染者が増えてきており。「夜の街」という言われ方は徐々になくなってきている。夜の街の感染の状況がだんだん見えてきて、感染防御の一番の対策である隔離が効いてきつつあるのだろう。