歴史が面白い163

令和2年11月25日

  <11月25日>

感染急増地域と往来自粛。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は25日、感染対策が徹底できない場合は感染状況が2番目に深刻な「ステージ3」に相当する地域との往来を今後3週間、自粛するよう求める提言をまとめた。「GO TOトラベル」で感染が拡大する地域からの出発分も一時停止の検討を要請した。

どの地域がステージ3にあたるかの最終判断は自治体に委ねられている。分科会の尾身会長は相当する地域として札幌市、東京23区、名古屋市大阪市を例示した。(日本経済新聞11月26日)

 

GO TO全停止に慎重。衆参両院の予算委員会は25日、菅首相と関係閣僚が出席し、集中審議を実施した。首相は「GO TO トラベル」事業について「大きな成果がある」と述べ、事業の全面停止に慎重な考えを示した。感染拡大防止と経済活動の両立を重視する姿勢を改めて鮮明にした。(同)

 

経済配慮 小刻み対策新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京都は25日、酒類を提供する飲食店やカラオケ店に28日から20日間にわたって午後10時までの時短営業を再要請すると発表した。年末を控え、「第3波」の抑制を図る。こうした小刻みに対策と緩和を繰り返して経済活動の維持を目指すのは、世界的な流れでもある。(同)

 

保健所、人員・機能を拡充。東京都はクラスターが発生した場合、「疫学調査」の業務支援に当たる保健所の人員を大幅に拡充する。感染経路をたどる「トレイサー班」はこれまで8人だったが、約100人に増やす。保健師や看護師資格を持つ非常勤職員を採用。都庁本庁舎のほか都健康安全研究センターに勤務し、クラスター発生時に多摩地域にある保健所などへ派遣される。

人手不足解消へ民間の人材派遣会社を活用する例もある。千葉県は民間を通じて看護師や事務員、ウイルス検査の検体を運ぶドライバーなど計45人を増員した。

神奈川県は2日、発熱患者らの医療機関への診療予約を代行する「発熱等診療予約センター」を開設した。(同)

 

専門家の意見 東京医科大学教授 浜田篤郎氏。現在の第3波は夏の第2波以降、国内にくすぶっていたウイルスによる感染が再燃したとみられる。今後は渡航制限の緩和で欧米のウイルスが新たに入り、蔓延する可能性がある。

相手国の状況を見極めたうえで、2国間合意で渡航制限を緩和するのは問題ない。だが、政府が11月から実施した短期の海外出張者全般に対する緩和措置は、感染者が検疫をすり抜ける恐れがあるので心配だ。

新たな措置は1週間以内の海外出張者に対し、出張先を出る前や日本入国時の検査で陰性なら2週間の自宅待機を求めない。この間、公共交通機関を使わず活動計画を提出するよう要請するが、すべての人が従うとは限らない。出張期間の最後の方で感染した場合、検査で陽性にならない人も多いだろう。入国時に陰性でも帰国から1週間の自宅待機後、改めて検査するといった対策を考えるべきた。

医療機関の多くは2週間以内に海外渡航歴のある人に受診を控えるよう求めているため、帰国後の受診や検査は難しい。多少、精度の問題はあるかもしれないが、唾液を採取して郵送で検査を受けられるサービスの活用も一つの手だ。(同)

 

危機下の株高 IT主導。米ダウ工業株30種平均が24日、史上初めて3万ドル台に乗せた。成長を続ける巨大IT企業がけん引する産業構造の転換で、2万ドルを付けた17年から4年弱で1万ドル上昇した。新型コロナウイルスによる経済危機が生んだ未曽有の株高は、緩和マネーが支えで、実体経済とのズレも目立つ。(同)

 

「医療 全国で崩壊危機」日本医師会中川俊男会長は25日の記者会見で、新型コロナウイルス感染が拡大していることを受け、「全国各地で医療提供体制が崩壊の危機に直面している」と懸念を表明した。「GO TO キャンペーン」が、感染予防に対する国民の「緩みにつながった」との見方も示した。(同)

 

欧州 長引く「都市封鎖」。新型コロナの第2波に見舞われ、再びロックダウンに踏み切った欧州各国が規制期間の延長を余儀なくされている。経済と感染防止の両立を目指し、春に比べて規制を緩やかにした一方、封じ込めは遅れている。各国ともクリスマス時期での本格緩和を見込むが、懸念もある。(朝日新聞11月26日)

 

 

(コメント)

欧州からの感染流入が気がかりだ。浜田教授(東京医科大学)によると11月から実施した短期の海外出張者全般に対する緩和措置だ。1週間以内の海外出張者に対し、出張先を出る前や日本入国時の検査で陰性なら、2週間の自宅待機を求めない措置だ。

これには感染が漏れる穴がある。

まず、出張期間の最後の方で感染した場合、検査で陽性にならないことがある、という論理の穴がある。つぎに、自宅待機はもとめないが、公共交通機関を使わず活動するとあるが、すべての人が従うとは限らない、とここにも穴がある。

 

政府には3月、欧州に対する水際対策で失敗がある。3月後半になるまで、中国や韓国に対して行っていたような強力な水際対策を、欧州の間では導入していなかった。その間イタリアで4万人、スペインで2万人、フランスやドイツで1万人を超える感染者が出ていた。これには、民間臨時調査会のインタビューで官邸の幹部も悔やまれるところだと認めている点だ。

その後の国立感染症研究所がゲノム分子疫学調査の結果、3月中旬以降全国各地で感染拡大したウイルスは、欧州系統のウイルスであることが判明した。武漢系統のウイルスは1月から2月のクラスター対策などにより、封じ込めに成功していたのだ。

 

今また同じようなことが繰り返されようとしている。今回の措置は経済再生を重視する政治主導で進められ、ぎりぎりの調整の後、実施直前の10月末に決定されている。