歴史が面白い186

令和2年12月18日

  <12月18日>

ワクチン 2月接種探る。米製薬大手ファイザーが18日、同社が開発した新型コロナウイルスワクチンの製造販売承認を厚生労働省に申請した。政府は来年2月にも接種を始められるように、保管や運搬体制などの方針を1月までに策定する。開発着手から実用化までの期間が短く、副作用など安全性や有効性の見極めが問われる。

日本国内での治験は進行中で、主要なデータの提出は2月になる見通しだ。データがそろっていないにもかかわらず申請を受け付けたのは、審査を前倒しで進めるためだ。海外で使用が認められていることなどを条件に、審査期間を大幅に短縮できる特例承認の適用をめざす。もっともファイザーのワクチンが日本人でも有効性や安全性が認められるかはまだ分からない。(日本経済新聞12月19日)

 

米、ワクチン2例目承認へ米食品医薬品局(FDA)は、18日にも米バイオ製薬大手モデルナの新型コロナウイルスワクチンの緊急使用許可を承認する。承認は2例目となる。世界の供給量も最大11億5千万人分に拡大し、感染収束への期待が高まる。

ファイザー製は16歳以上が対象で、1回目の接種から3週間開けて2回目を打つ。モデルナ製は18歳以上が対象で、4週間後に2回目を接種する。

二つのワクチン供給量は21年に最大11億5千万人に上る。(同)

 

国王、コロナ対応「失敗」新型コロナウイルスの感染者と死者が再び急増しているスウェーデンで、強制的な措置をとらない「緩い」独自戦略に懐疑的な見方が出ている。カール16世グスタフ国王(74)が、自国の対応は「失敗したと思う」と発言。政府は基本路線を保ちつつ、対策強化に乗り出している。

国王の任務は主に儀礼的なもので、正式な政治的権限を持たず、政策に言及するのは異例だ。

スウェーデンは外出制限や店舗閉鎖を伴うロックダウンは避け、他の欧州諸国とは一線を画してきた。感染対策を率いる保健当局は、マスク着用も「効果の科学的証拠は弱い」として求めていない。

一方、秋以降の感染の再拡大は激しく、この1か月だけで1600人以上が亡くなった。人口が約半分のノルウェーフィンランドが100人程度なのに比べるとはるかに多い。第1波では特に、介護施設で多くの高齢者が亡くなった。政府の独立調査委員会は15日、こうした施設では備えが十分ではないのに職員たちは自力での対応を迫られたとし、高齢者を守るうえでの「戦略は失敗だった」と報告していた。

政府や保健当局は先月以降、一度に集まれる人数を8人までに制限する▽飲食店でのアルコール飲料の提供を午後10時以降は禁止する▽高校生や首都の中学生は自宅学習に切り替えるーなどの抑止政策強化を打ち出している。(朝日新聞12月19日)

 

コロナ渦で休退学5千人超新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、10月までに大学・大学院を退学したり休学したりした学生が少なくとも計5238人いることが18日、文部科学省の調査で分かった。文科省は感染拡大で経済が冷え込めばさらに増えかねないとして、学生らへの支援を拡充させる。

文科省は18日、学びの継続への支援として、バイト収入が大幅に減った学生らへ無利子の奨学金の再募集を行うとともに、就職内定が取り消された学生らが止む得ず留年する場合、奨学金の貸与期間を一年延長すると発表した。(同)

 

(コメント)

スウェーデン国王がコロナ対応の失敗を表明した。国王の政治的なコメントはよほどのことだろう。

スウェーデンはロックダウンはしないということで、第1波の際は集団免疫獲得を目指していると非難されたこともあった。そのご夏場は感染が抑えられていたが、11月に入って感染が拡大した。さらに死者が人口対比でも多いという事態になり国王の発言となった。

 

現地で医師をされている宮川絢子氏(カロリンスカ大学病院)によると、スウェーデンはロックダウンは長期間持続不可能であるだけでなく、エビデンスがないとして、独自の感染対策を行っており、集団免疫獲得を目指したものでないという。実際には、数々の規制があり、国民はその規則に従って行動しており、部分的ロックダウンといえる。

さらに、憲法が「国民の移動の自由」を謳っているため、国が移動に規制を加えるロックダウンを行うことはできない。

 

死者が増えてしまった背景には介護施設システムの抱えていた脆弱性があったという。

スウェーデン介護施設には、通常自宅で介護できなくなった症状の重い高齢者が居住し、入居後20%が1か月以内に死亡、18か月で40%が死亡する。もともと予後の短い重症者が多いという背景から、介護施設の感染者の多くは病院に搬送されることがなく、感染者の30%が亡くなっている。

 

それではなぜ、介護施設クラスターが多発し、多くの犠牲者をだしてしまったのか。介護施設には常駐の医師はおらず、看護師もわずかであり、医療の質は良いとは言えない。さらにスウェーデンは雇用者の権利は厚く守られていることから、介護の現場ではコストの低いパートタイマーを多く雇っている。パートタイマーには傷病手当などの補償がないため、「軽い症状があるときも自宅待機」という公衆衛生庁からの指針に従わず勤務を続けることも多かったという。

 

このように、コロナ感染にはその国が持っている事情があり、その弱いところが出てしまう。スウェーデンでも介護システムの脆弱性については、課題として認識し、改善されることになっているという。

コロナは世の脆弱なポイントをあぶりだす、社会システムのストレステストになっているのかもしれない。