歴史が面白い203

令和3年1月4日

  <1月4日>

緊急事態宣言を1カ月程度。政府は新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため、7日にも緊急事態宣言を再び発令する。東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県が対象で期間は1カ月程度を想定している。感染リスクが高いとされる飲食店の営業時間短縮に重点的に取り組み、「Go To トラベル」の停止も継続する。教育現場への影響を避けるため、小中高校や大学への休校要請はしない方針だ。

政府は知事による飲食店への時短要請や、住民への外出自粛要請などを対処方針の柱にする見通しだ。デパートや映画館などの商業施設は感染対策の徹底を条件に営業を認める案がある。(日本経済新聞1月5日)

 

都立病院を重点拠点に。東京都が新型コロナウイルスの感染拡大を受け、都立・公社病院をコロナ患者受け入れの重点拠点とする方向で検討していることが分かった。コロナ対応できる医療従事者は限られており、医療資源を集約し効率的に活用していくことで民間の医療機関への負担を軽減する。

都は現在、3500床のコロナ対応病床を確保しているが、急速な感染者の増加に伴い、4日時点で約3000床が埋まる。都は医療資源を集約し、原則全ての都立・公社病院で患者を受け入れることで、専用病床の上積みを目指す。現在の入院患者は他医療機関に転院させるなど対応を検討する。都立・公社病院は14日所あり、都はコロナの専用病床を合計1千床規模での確保を目指している。(同)

 

病床確保速やかに。「感染拡大を抑制している間に医療の受け皿を拡充する」。政府が新型コロナウイルスに対応するため2020年2月に打ち出した方針だ。だが欧米より病床数は多く感染者は少ないのに医療現場は逼迫している。病床や病院の集約化と役割分担ができず、感染者が減った間の「時間稼ぎ」を生かせていない。

厚生労働省によると、全国約7300病院のうち、20年9月時点で新型コロナ患者の受け入れ可能病院は2割強の1700病院。都道府県が確保した病床は最大約2万7千床だ。だが、一般病床と感染症病床(約千床)を合わせた約90万床の3%にとどまる。

新規感染者が桁違いに多いスウェーデンでは第1波で首都ストックホルムの大学病院が約1600床のうち約500床をコロナ対応に転換。通常診療の一部はコロナ対応をしない病院に委託した。人口当たりの病床数は日本の4分の1にもかかわらず、集約化と役割分担で柔軟に対応した。

ドイツでは数百床規模の大病院の病床の1割をコロナ専用にして医療資源を効率的に活用した。日本は1病院平均で約15床。県境を越えた協力体制を十分に築けず、逼迫の地域差も大きい。

東京都は公立病院に患者を集約することを検討しているが、遅きに失している。民間病院が8割を占めるのに官民連携も不十分のまま、柔軟な対応が求められている。(同)

 

ワクチン接種 官邸動く菅義偉首相は4日、新型コロナウイルスの米社ワクチンについて、国内接種を2月下旬に開始すると表明した。厚生労働省の動きが鈍いとみて首相官邸の主導で米本社と交渉した。

日本は国際的に「ワクチン後進国」と呼ばれる。所管の厚生労働省に慎重論が根強いためだ。

2020年12月下旬。首相官邸からワシントンの日本大使館に電話が入った。「すぐにでもファイザー本社と交渉してくれ」。指示の内容はファイザー社の治験データの日本政府への早期の提供を要請するというものだった。

同時期に厚労省が交渉していたのは、同社の日本法人。ファイザー社とはいまだ基本合意どまりで、契約の締結にも至っていなかった。

本社との直接交渉により当初2月に予定していたデータ提供は「1月提供、2月下旬接種開始」との日程に前倒しされた。(同)

 

成人式の中止相次ぐ新型コロナウイルスの感染拡大や政府が緊急事態宣言の再発令検討を表明したことを受け、成人式の中止が相次いでいる。中止を決めたのは、港、目黒、台東、荒川、板橋、葛飾の各区など。(読売新聞1月5日)

 

特措法改正 改めて意欲。首相は4日の記者会見で、緊急事態宣言の根拠となる新型インフルエンザ対策特別措置法を改正し、飲食店などへの「給付金と罰則をセット」にすることに意欲を示した。

首相が罰金などの罰則の盛り込みに意欲を示すのに対し、野党などには「私権の制限につながる」として慎重論が多い。立憲民主党の枝野代表は4日、国会内で記者団に「事業が継続できないことを罰則付きで命じることは、財産権の侵害にもなりかねない」とけん制した。(同)

 

入国 前面停止へ。政府は中韓を含む11カ国・地域からビジネス関係者を受け入れている入国緩和策について、新型コロナウイルスの変異ウイルスが確認されたかどうに関わらず、一時停止とする方向で検討に入った。これにより外国人の新規入国は事実上、全面的に止まる。期間は調整中だが、少なくとも緊急事態宣言中は停止する方向だ。

出入国在留管理庁によると、緩和策による入国者(昨年12月14日~20日)は中国が約3830人、ベトナムが約3390人、韓国が約340人など。(朝日新聞1月5日)

 

宣言の効果 疑問視も。「勝負の3週間」を終えた12月中旬以降も止まらなかった感染拡大。度重なる協力要請に「辟易している方が多いと」政府の分科会も指摘したように、人々の行動は変わらなかった。首都圏の感染者数は減らなかった。

都内では年末年始、連日100人以上の感染者が、入院が必要と診断されながら入院できない事態に陥るなど、医療は事実上、破綻しているともいえる。度重なる警告が効果を生まなかった首都圏で、宣言を出して感染者が減少するのか。その難しさを指摘する専門家もいる。

東大経済学部の渡辺努教授らの研究によると、昨年4月の宣言による外出抑制は効果は約8%にすぎず、増加する感染者や死者数の情報から得る恐怖心による効果のほうが大きかったという。渡辺さんは「恐怖心は春をピークに弱まっている。今や若い世代の大半は恐怖心をもっていない。協力してもらうには、周囲にうつさないという利他心に訴えるメッセージを政府が出すべきだ。『行動の自由を奪う宣言を本来は出したくないが、今は必要』と伝えることで反発は減るのではないか」と指摘する。(同)

 

新宿区「時短協力金上乗せを」自治体が様々な判断を迫られる緊急事態宣言の発出も濃厚になり、吉住健一区長は「強制力を伴う効果は期待できないが、首相の判断は尊重する」。飲食店などの営業時間を午後8時までに短縮する要請については「酒類提供の店にとっては休業要請に等しい。協力金を上乗せするべきだ」との見解を示した。(同)

 

飲食店ばかり また千葉市中央区の焼肉レストラン「shira」の店長、井戸口氏「さらなる時短は死活問題」「飲食店だけがターゲットになっている。満員の通勤電車への対策など、順序が逆なのではないか」と不満を募らせる。

千葉市中央の繁華街にあるレストラン「ビストロ・レコルト」の店長、大塚氏は新たな時短要請に応じる予定だ。でもこれまで、周りでは午後10時以降も営業する店があった。「行列ができている店もある。強制力のない要請にいみはあるのか」という。

「店の大きさや、店員数など店舗ごとに事情が違うので、一律ではない支給額の設定が必要ではないか」と訴えた。

横浜市内でコーヒーショップを営む男性。今回の要請で、12日以降はすべての飲食店で午後8時まで時短を求められる。これに納得がいかないとしている。間隔を空けて座ることやマスクの着用をお願いしている。「学生が遅くまで自習で使っている。大声でしゃべるような店でもないから、飛沫はないのですが・・」

東京都千代田区で半世紀近く続く喫茶店神田伯剌西爾」店長、竹内氏「ここまで感染者が増えていれば、仕方がない」と、閉店時間を繰り上げる方針だが、「多くの客が、飲食店は危ないのではという気持ちになるだろう。一度離れた客がまた戻るには、時間がかかる」。(同)

 

大阪・愛知・福岡 宣言要請せず大阪府の吉村知事は4日、首都圏のように新規感染者が急拡大していないとして、緊急事態宣言発出の要請は見送った。府内では新規感染者数はやや減少傾向にあるが、重症患者は4日に過去最多の171人となった。208床ある、すぐに患者を受け入れる病床の使用率は82.2%と病床の逼迫も続いている。

愛知県の大村知事は4日の会見で「現段階では緊急事態宣言を要請する状況ではない」と述べた。県内の新規感染者数は昨年12月30日に294人に達したが、今年1月に入ってから200人を下回っており、大村氏は「首都圏とは客観的な感染者の状況の水準が違う」としている。一方で、大村氏は、県全域でで11日までとしていた酒類を提供する飲食店などへの時短要請については延長を検討する考えを示した。

福岡県では12月30日に189人、31日に190人の感染が判明し、2日連続で最多を更新。市中感染の広がりの目安となる陽性率は今月1日に13%を超えた。ただ、今回は政府に宣言の要請はしていない。福岡県の担当者は4日、「医療体制の状態と、社会経済レベルを落とすかを総合的に判断すると、宣言を要請するような状況にはない」との認識を示した。(同)

 

(コメント)

急所ということで名指しされた飲食店を中心に緊急事態宣言が出されようとしている。

飲食店は厳しい状態に置かれ、いわば今回のスケープゴートにされたことになる。

経路不明の中で見えやすいところに絞った対策であるが、今回の急拡大の本当に急所であったか不明である。水際対策をかいくぐった変異種の影響かもしれない。

 

緊急事態宣言が出されようとしている中、新聞各社の社説の論調はどうか、要点を勝手にまとめた。

日本経済新聞は、急所をつく感染防止策として飲食店の営業短縮は的を絞った対策で効果的だと評価。ただし飲食店の補償は手厚くする必要がある。そして国内の医療体制の整備が改善されていないとし、国内の医療資源の偏在を司令塔機関を決めて、専門医や看護師の配置を調整できる仕組みが必要だとしている。

 

朝日新聞は、医療現場の一部では機能不全が起きており、要請されるまでもなく、より強い対策を講じるべき段階だとしている。これまで、政府・自治体双方の甘い認識が、対応で後手後手に回りこのような状況を招いてきたと指摘。宣言発出では対策の全体像をわかりやすく打ち出し、情報を随時開示して施策への信頼感を高め、協力の機運にもつなげるようにする。

 

読売新聞は、生活や雇用に目配りしつつ、感染抑制に全力を挙げねばならないと評価。

医療提供体制を充実させることは急務とし、病院への補助金などを手厚くし、より多くの医療機関に患者を受け入れをもとめるべきだとしている。また、事業者に対し、政府は予備費などを活用して自治体の財源を確保し、事業者の資金繰りを支えねばならない。雇用調整助成金の支給額を増額する特別措置のさらなる延長や、事業を支えるための持続化給付金の再交付なども検討に値するとしている。

そして、行動制限や休業要請への理解を広げるには、政府が明確な方針を示し、国民に協力を呼び掛けていくことが不可欠だとしている。

 

3社とも緊急事態宣言は時期が別にして発出は評価している。

日本経済新聞と読売新聞は医療体制の整備に対し具体的な注文をつけている。ここは政府・自治体などは、対応が遅れたあるいはできていなかったところではないか。

 

また、朝日新聞と読売新聞は明確な政府の方針の提示とその後の情報開示を求めている。

これは若い世代に行動変容を迫るために必要なことである。今日の新聞記事にある東大経済学部の渡辺努教授の研究によると、昨春の緊急事態宣言下での外出抑制は効果があったが何が効いたのか。宣言による抑止効果は8%にすぎず、増加する感染者や死者数の情報から得る恐怖心の方が大きかったという。今は若い世代に恐怖心はない。協力してもらうなら、周囲にうつさないという利他心に訴えるメッセージを政府が出すべきだという。

国民全体が重症者や死者をこれ以上出さない。そのため国民全体がこの明確な方針で努力し、そしてその結果として減少しているというメッセージを随時出すことだ。政治家のぬけがけの会食など以ての外である。