歴史が面白い260

 

令和3年3月2日

  <3月2日>

接種後 初の死亡事例厚生労働省は2日、新型コロナウイルスワクチンの接種後に60代女性が死亡したと発表した。国内での接種開始後、死亡事例の報告は初めて。死亡したのは接種の3日後で死因はくも膜下出血と推定される。因果関係は不明という。海外の接種事例でワクチンとくも膜下出血の関連を明確に示す報告はないとみられ、偶発的な事案の可能性もある。

60代女性は2月26日に接種を受け、3日後の3月1日に死亡した。女性に基礎疾患やアレルギー歴はなかった。(日本経済新聞3月3日)

 

都、重症病床の使用率急落厚生労働省が毎週公表している新型コロナウイルスの指標のうち、東京都の「重症者向け病床の使用率」が前週比で86%から32%になったことが話題を呼んでいる。分母となる確保病床数の報告数について都が国の基準に合わせたためだが、緊急事態宣言の解除判断に使われる重要な指標だけに精緻な運用が求められる。(同)

 

モデルナ、週内にも申請武田薬品工業は2日、米バイオ製薬モデルナの新型コロナウイルスワクチンについて厚生労働省に製造販売承認を週内にも申請する方針を固めた。国内での承認申請は米ファイザー、英アストラゼネカに次いで3例目となる。日本での臨床試験は継続中だが、海外のデータを基にして申請する。厚労省の承認を経たうえで武田は6月までの国内供給開始を目指す。(同)

 

コロナ下 休業244万人新型コロナウイルス禍で2回目の緊急事態宣言が出た1月の雇用統計が2日、公表された。営業時間の短縮要請で仕事を休まされるなどした休業者は、前月より42万人多い244万人に増えたが、1回目の緊急事態宣言時の4割ほど。失業率は悪化しておらず、雇用への大きな打撃まではみられない。(朝日新聞3月3日)

 

国内死者 8千人超す新型コロナウイルスの国内感染者は、2日午後8時現在で新たに888人が確認された。死者は新たに65人確認され、累計で8千人を超えて8026人(クルーズ船(13人)含む)になった。死者が7千人を超えた2月15日から、15日間で970人増えた。(同)

 

緊急事態解除 相次ぐ慎重論新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言の期限が7日に迫る中、首都圏4都県の知事から解除に慎重な声が相次いでいる。政府は予定通りの解除をめざすが、新規感染者は下げ止まり、病床の使用率も高い水準で推移する。専門家からも解除に懐疑的な意見も根強く、政府は難しい判断を迫られている。(同)

 

 

(コメント)

緊急事態解除に首都圏の知事が慎重な報道がなされている。

感染者が500人も切っている中で踏み切れないのは、病床の逼迫度が改善しないのが大きい。

今回のコロナで大きくクローズアップされたのが医療体制だ。

 

特集 コロナ医療の病巣①(日本経済新聞3月3日)によると、

日本の医療体制は他の先進国よりも少ない感染者を前に、驚くほどのもろさを露呈したとして、その病巣を探るとして特集は始まる。

 

『日本の病院経営は脆弱だ。小規模な病院が全国に林立し、医師や看護師ら医療従事者も分散し治療の効率が諸外国に比べ悪い。

小規模病院が点在し、均一の医療を提供できることは日本の強みだが、一方で有事の備えがなく、非常時の対応力は乏しい。

歴史的にこの源流は、1961年の国民皆保険制度の創設までさかのぼる。皆保険で急増した医療ニーズを引き受ける形で民間の診療所が増えた。公的病院に病床規制が導入される一方、診療所の一部は規模を拡大し、入院機能を持つ病院に衣替えしていった。

82年まで25年にわたって日本医師会の会長を務めた武見太郎氏は開業医の利益を重視。医師が外部干渉を受けずに活動する「プロフェッショナル・フリーダム」を掲げ、政府の介入をことごとく阻んだ。こうして「経営の自由」が確保された病院が増加の一途をたどった。

日本では診療所の開設やどの診療科を掲げるかは自由。それはコロナ前から救急医や産業医の不足、医療費の無駄をうむ重複診療などの問題につながってきたが、診療ニーズにあわせて医療機関数を調整するといった規制は手つかずだ。

お金で医療機関を誘導するコロナ対応は財政の制約もあり限界がある。』

として、最後に

医療機関の「経営の自由」をパンデミックという非常時にどこまで守るのが正しいのか。コロナは日本医療の積年の宿題を改めて突き付けている。』

でまとめている。

 

病床数が思ったほどに増えないのは、厚労省(および知事)と医師会の努力不足だと私は考えていた。しかしその背景は過去にさかのぼり根は深い。

歴史的にみると1960年代からすでに新自由主義的な考えで病院経営がされていたということだ。民間でできることは民間でやる。公的病院は最小限でいい、ということで儲かることはやるが儲からないことはやらない、という経営スタンスが今の病院のスタイルになっている。したがってパンデミックに対応するための備え(普段ニーズのない医療に対する人材や資源)はこの考えが前提なら持ちようがない。

医療はやはり命を扱うところで国の安全保障にかかわるところである。いざという時のための備えは必要経費として考えておかないとならない。それは公的医療機関の充実と民間のいざという時に駆け付けるという体制を構築しないといけない。

コロナの危機はそれを教えてくれている。