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令和2年8月17日と官邸 非常事態「3」

  <8月17日>

コロナ死者 増加の兆し新型コロナウイルスの死者が増加している。8月17日までに106人と7月1カ月の39人より多い。ほとんどが高齢者で若者からの感染拡大が影響している。(日本経済新聞8月18日)

 

国立感染研、クラスターを分析新型コロナウイルスをめぐって、各地で発生しているクラスターについて、国立感染症研究所はこのほど一部の具体的な事例を発表した。その一例として。日中にカラオケを楽しむ高齢者らを中心に発生した「昼カラ」クラスターでは、少なくとも5店舗12人の感染が確認された。広がった原因は客による複数店舗のはしご利用だ。感染した利用客7人のうち、4人が複数店舗を使い、3店舗を利用した客もいた。(同)

 

<<コロナの時代(朝日新聞7月15日)>>

 

  <官邸 非常事態「3」>

新型コロナをめぐる動き(2月16日~3月15日)

2月16日  政府の専門家会議が初会合

       3閣僚が地元行事を優先し、政府の対策本部を欠席

  17日  厚生労働省が「相談・受診の目安」を公表

  22日  厚労相、「アビガン」の臨床研究開始の意向を表明

  24日  専門家会議、「1~2週間」が瀬戸際と見解公表

  25日  政府、新型コロナ対策の基本方針を決定

  26日  首相、大規模イベント自粛を要請

  27日  首相、学校の一斉臨時休校を要請

  28日  北海道知事が独自に「緊急事態宣言」

  29日  首相、新型コロナ対応で初の記者会見

3月 5日  日中両政府が習近平国家主席国賓訪日延期を発表

  13日  新型コロナ対応の改正特別措置法が成立

       トランプ米大統領が国家非常事態を宣言

 

政府の専門家会議が2月24日に公表したある見解が政権に衝撃を与えた。

「これから1~2週間が(感染の)急速な拡大に進むか、収束できるのかの瀬戸際」。

危機管理の局面が大きく変わった瞬間だった。政府との事前調整もないまま突然示された見解に、安倍首相はいらだった様子だったという。官邸内はかつてない緊張感に包まれた。「1~2週間」で一定の成果が求められる「瀬戸際」に、いきなり立たされたからだ。クルーズ船対応で内外の批判を招いている状況に加え、この「瀬戸際」の対応を間違えれば、政権の致命傷になりかねない。

こうした中、政府の危機管理対応は、首相最側近の今井尚哉・首相補佐官が中心となって采配を振るうようになる。

 

3日後の27日夜。政府の対策本部会合で、首相は突如、全国一律の休校要請を表明した。与党幹部への根回しはなく、政権の危機管理対応を担う菅官房長官にも直前まで伝えない中での決断だった。休校要請は数日前の官邸幹部とらの会合で出された案で一度とん挫していた。立ち消えになった案を再び俎上に載せたのは、事態に危機感を強めた今井氏だった。首相は、政権内の慎重論を置き去りにする形で一斉休校へと踏み切った。

突然だった一斉休校は現場に混乱をもたらしただけでなく、専門家の意見を踏まえていない政治判断だと批判を受けた。一方で、世論調査では好意的な受け止めが多数を占め、首相官邸内では「成功体験」として受け止められた。