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令和2年8月19日と官邸 非常事態「5」

  <8月19日>

ワクチン賠償 国が責任。政府はコロナウイルスのワクチンを使って健康被害が生じた場合、製薬会社の代わりに賠償する方針だ。次の国会に新法を提出して早期成立をめざす。

政府は現在、海外の3~5社と弁護士を交えて交渉している。海外の製薬会社は「ワクチンの副作用による健康被害で損害賠償を求められたら対応できない。国が肩代わりしてほしい」と求めている。海外では感染症のワクチンによる健康被害について、国が賠償を肩代わりする例は多い。米国では不正がないことなどを条件に緊急時は製薬会社に免責権を与えている。

日本でも2009年に新型インフルのワクチンを輸入する時に、海外企業に補償する特別措置法を整備した。同法の施行後に企業側と損失補償契約を締結した。

WHOや米食品医薬品局(FDA)は現状をパンデミックと判断し、通常とは異なるワクチン開発を認めている。普通はワクチンの有効性を判断する指標のうち8割以上を満たすことが条件だが、今回は「50%以上」と緩和した。治験を数カ月しか見込まない例もある。(日本経済新聞8月20日)

 

介護施設 感染予防急ぐ新型コロナウイルスの死者を増やさないため、介護施設での感染防止が急務だ。海外では職員などへの検査の徹底や、感染予防の専門家の配置といった対策が進む。英大学の研究チームの調査では、第1波では26カ国・地域の死者のうち介護施設の入所者が約5割を占めた。日本も対応を進める必要がある。

日本では今月17日までに確認された943件のクラスターのうち、介護施設は101件を占める。欧米のように死者数にはなっていないが対策の徹底は道半ばだ。

厚労省は依然として、PCR検査(行政検査)を感染疑いのある人や濃厚接触者に限る原則を崩していない。介護施設の職員らへの定期的な検査は、同省が求める感染防止策には含まれず、各自治体の判断に委ねられているのが実情だ。(同)

 

沖縄のGOTO除外には否定的。新型コロナ感染症対策分科会の会長を務める尾身茂氏は19日、衆議院厚生労働委員会の閉会中審査で、感染者が増えている沖縄県を現段階で対象から外す必要はないとの認識を示した。「個人的な見解ではある程度、沖縄の感染は下火になっている」「医療体制に負荷がかかって心配な状況ではあるが、(感染の広がりを示す)実効再生産数は1を切っている」などと説明。(朝日新聞8月20日)

 

「第2波まっただ中」現状は新型コロナウイルスの国内の流行状況について、日本感染症学会の館田一博理事長は19日、東京都内で始まった学会の学術講演会で「「第2波」のまっただ中にいる」と述べた。6月以降の感染者数は今春の「第1波」の2倍以上に上る。政府はこの日、「第2波」とは明言しなかった。館田氏は政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の構成員と、厚生労働省の助言組織のメンバーも務めている。(同)

 

 

<<コロナの時代(朝日新聞(7月17日)>>

 

  <官邸 非常事態「5」>

新型コロナをめぐる動き(4月16日~5月15日)

4月16日  首相、緊急事態宣言の対象区域を全国に拡大

       首相 現金給付策を国民に一律10万円に変えると表明

  18日  国内の感染者数が1万人を超える

  20日  政府、補正予算案を修正して閣議決定

       米原油価格が暴落、史上初の「マイナス価格」に

  22日  専門家会議、接触8割減のための「10のポイント」公表

  28日  文化相、学校の9月始業を「一つの選択肢」と発言

  30日  総額25兆6914億円の補正予算が成立

5月 2日  国内の死者数、500人超える

   4日  専門家会議、「新しい生活様式」公表

       政府、緊急事態宣言の5月末までの延長を決定

       首相、アビガンの薬事承認「月内めざす」と発言

   7日  厚労省、レムデシビルを治療薬として特例承認

  14日  政府、39県の緊急事態宣言を解除

 

5千万余りの全世帯にへ2枚ずつ布マスクを配布する。安倍首相が4月1日に政府対策本部で突然打ち出した方針に、ネット上がざわついた。約466億円を計上し、のちに「アベノマスク」と呼ばれるこの計画を生み出したのは、佐伯耕三首相秘書官だった。

2月下旬ごろ、全国民に布マスクを配布することを首相に進言したのは佐伯氏だ。この進言を受け、3月10日に決定する新型コロナウイルスへの緊急対応策第2弾に、布マスク配布を加える検討が進んだ。官邸では異論があり、この場では実現せずに終わった。ところが、マスク不足はいっこうに解消しなかったため、第1次補正予算で事業規模100兆円超の緊急経済対策をまとめる中で、佐伯氏の案が再度浮上。ついに実行に移されたが。今度は予想外のミスが生じた。布マスクに汚れなどの不良品の指摘があり、回収、検品することになった。

 

世論を読み間違えたのはマスクだけではなかった。人気ミュージシャンの星野源さんが4月3日にインスタグラムに投稿した楽曲に、佐伯氏が再び目をつけた。首相が自宅でくつろぐ姿を撮影し、楽曲に重ねた動画を同12日に投稿した。これに批判の書き込みが殺到した。

 

権力の中枢であるはずの首相官邸で、なぜ世論と乖離したような提案が実現していくのか。「首相は側近の偏った情報で判断しているところがある。心配だ」。政府関係者は首相と周辺の閉鎖的な関係性に懸念を示す。安倍政権のコロナ対応は世論を前に大きく揺れ動いた。「場当たり的」とも批判された政権の姿勢は、コロナ対応の助言を得る背専門家との間にもひずみを生じさせることになる。