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令和2年8月28日とエアロゾル感染「下」

  <8月28日>

ワクチン全国民分。政府は28日、新型コロナウイルスへの新たな対策をとりまとめた。2021年前半までに国民全員分のワクチンを確保することが柱だ。(日本経済新聞8月29日)

 

雇用への備え厚く厚労省は28日、雇用を維持して従業員に休業手当を支払う企業向けの雇用調整助成金について、9月末までだった特例措置を12月末まで延長すると発表した。(同)

 

コロナ対策 実効性は。政府が28日に発表した新 型コロナウイルス対策は、重症者の治療に注力する体制づくりや全国民分のワクチンの確保が盛り込まれた。今後の新型コロナウイルス対策のポイントは、

(1)感染症法の見直し

  軽症者や無症状者について宿泊医療や自宅療養での対応を徹底し、医療資源を

 重症者に重点化

(2)検査体制の抜本的な拡充

  インフエンザ流行期に向けて抗原簡易キットを1日20万件程度に大幅拡充

(3)医療提供体制の確保

  患者を受け入れる医療機関の安定経営を確保するためにさらに支援

(4)ワクチン供給

  2021年前半までに全国民に提供できる数量のワクチンを確保

(5)保健所の体制強化

  自治体間の保健師等の派遣スキームの構築

                       (同)

 

コロナ危機「さらに深刻」。ドイツのメルケル首相は28日に記者会見を開き、新型コロナウイルスの流行らついて「今後数カ月で夏よりさらに厳しい状況になる」と警告した。屋内での活動の増加などが原因で「事態は深刻で、あなた方も引き続き深刻に受け止めなければならない」と呼びかけた。ドイツは夏のバカンスやパーティーの影響で、一時は数百人規模に抑え込んでいた1日の感染者数が再び1千~2千人程度に増えている。(同)

 

<<エアロゾル感染「下」>>

 

理化学研究所は8月24日、スーパーコンピューター富嶽」を使い、マスクによる飛沫の拡散防止効果など計算した結果を公表した。この際、直径20マイクロメートル以下の飛沫についてもシミュレーションしており、エアロゾルにも注目したものとなっている。

 

今回発表した「室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測とその対策」は、オフィスや教室、病室、多目的ホールといった室内環境において、ウイルス飛沫による感染リスクを、さまざまな条件下で評価し、空調や換気、マスクなどを活用したリスク低減対策を提案する狙いだ。

そして「新型コロナウイルスが、せきやくしゃみ、声を出すことなどで発生する飛沫と、これらの飛沫のうち、非常に小さいものであるエアロゾルによって、感染が広がる可能性が指摘されており、感染リスク評価と、予防対策のためには、飛沫やエアロゾルの飛散経路を正しく推定する必要がある」とし、予測が単純な飛沫ではなく、複雑なエアロゾル感染に注目したシミュレーションが眼目となっている。また、それが世界一の計算能力のある「富嶽」を活用する所以である。

 

研究チームリーダーである神戸大学システム情報学研究科の坪倉誠教授は、「マスクを着用していれば、咳をしても飛沫を抑え、気流を抑える効果があり、遠くに飛沫が飛ばない。頬と鼻の部分にマスクの隙間があっても、体積比では8割の飛沫を抑えられる。また、自分を守る被感染防御効果では、体積比で7割程度を抑えられる。数値結果からは、不織布マスクだけでなく、手作りマスクでも十分役割を果たす」とした。

 

また、オフィスのパーティションは、1.2mの高さでは、飛沫飛散を防御するには不十分である一方で、1.4m以上の高さになると、部屋内に換気の悪い場所が局所的にできやすくなり、エアロゾルの感染リスクが高まることもわかった。「換気むらを、できるだけ少なくすることが、エアロゾル感染リスクを低減させる意味において重要である」と指摘した。

 

教室でのエアロゾル感染はエアコンや窓明けでリスク低減ができる。大きく窓を開けた場合は100秒で新たな空気に入れ替わっていること、わずか20センチしか窓が開かなくとも、対角換気を行えば、十分な換気ができることが示された。

 

またイベントホールの場合でも外気を取り入れたエアコンとホール上部の吹き出し口からの排気で空気の清浄化を図ることができるとしたシミュレーションが示されており、エアロゾル感染の大きな対策に換気があげられている。

 

 

国立病院機構仙台医療センター・ウイルスセンター長の西村秀一氏は、学校の「感染対策」で接触感染に重点を置きすぎ、過剰な消毒対策がとられていると警鐘をならし、むしろ空気中に浮遊するウイルスによる感染に注意すべきとしている。ここではエアロゾルという言葉は使っていないが内容的にはそれである。そして「感染成立に必要なウイルス数は、呼吸によって気道に到達する方が、物を介するよりもはるかに少ないためです。ただ、怖がり過ぎる必要はありません。「3密」と言われる条件で起き、屋外のような風のある広い場所なら感染者が少々のウイルスを出しても飛散して薄まり、感染リスクはすぐ無視できるレベルになるからです。3密を避け、換気することが大切です。暑い間は冷房をつけますが、全員がマスクを着け、10分に1回ぐらい窓を開ける換気をすれば、感染は広がりません」

まさにエアロゾル感染の防御の仕方を説明されている。

 

 

このような現場の少々な混乱は、WHOや厚労省エアロゾル感染について明言していないことによる。当初両者とも、接触感染と飛沫感染が感染経路で空気感染は否定していた。このことがなかなか認めようとはしたくないだろうか。WHOは7月上旬、200人を超える世界中の科学者からの報告でしぶしぶ可能性を認めている。そして、7月29日「公共スペースや建物内での換気や空調とCOVIDー19」でガイダンスを作成し、「換気はCOVID-19を引き起こすウイルスが室内で広がるのを防ぐうえで重要な要因です。」としている。

 

厚労省は7月30日、「新型コロナウイルス感染症はこうした経路で広がっています」という一般向けの図を作成した。そこには飛沫、接触、マイクロ飛沫を同等に図解している。そして図のマイクロ飛沫に吹き出しを付け、「換気の悪い密閉空間では、5マイクロ未満の粒子がしばらくの間、空気中を漂い、少し離れた距離まで広がる可能性も」とあり、さらに※がついてあり、それには゛いわゆる「空気感染」は。結核菌や麻疹ウイルスで認められており、より小さな飛沫が、例えば空調などを通じて空気中を長時間漂い、違い距離でも感染が起こりえるもの。「マイクロ飛沫感染」とは異なる概念であることに留意が必要゛とされている。

あくまで空気感染ではないことを強調しているが、マイクロ飛沫感染はまさにエアロゾル感染のことである。そしてエアロゾル感染は空気感染の一部ではあると一般にはされているようでこれは矛盾する。あくまで用語としてマイクロ飛沫感染でべつものと主張したいようだ。新型コロナウイルスは誰も経験していないもので、刻々と認識がかわるのは当然である。かつての自分の言説にこだわることはないように思われる。