歴史が面白い2

 

 過去の感染症の流行で今回のコロナウイルスに匹敵するのは、100年前のスペイン・インフルエンザの流行であるといわれている。それについては速水融氏の「日本を襲ったスペイン・インフルエンザ」に記されている。今の感染を歴史的にとらえるには、歴史人口学の大家である速水氏の視点が参考になると思われる。以下著者の目次に沿ってその視点を追っていきたい。

 第1章 スペイン・インフルエンザとウイルス

   なぜ「スペイン・インフルエンザ」か

   インフルエンザ・ウイルスの構造と特徴

   新型インフルエンザ発生のメカニズム

   ウイルス発見をめぐるドラマ

   ワクチンも「タミフル」も万能ではない

 第2章 インフルエンザ発生

   3月 アメリ

   4月-7月 日本

   5月-6月 スペイン

   7月-8月 西部戦線

   「先触れ」は何だったか?

 第3章 変異した新型ウイルスの襲来

   アメリ

   イギリス

   フランス

 第4章 前流行

   本格的流行始まる

   九州地方

   中国・四国地方

   近畿地方

   中部地方

   関東地方

   北海道・奥羽地方

   小括

 第5章 後流行

   後流行は別種のインフルエンザか?

   九州地方

   中国・四国地方

   近畿地方

   中部地方

   関東地方

   北海道・奥羽地方

   小括

 第6章 統計の語るインフルエンザの猖獗

   国内の罹患者数と死亡者数

   全国の状況

   地方ごとの状況

 第7章 インフルエンザと軍隊

   「矢矧」事件

   海外におけるインフルエンザと軍隊

   国内におけるインフルエンザと軍隊

   小括

 第8章 国内における流行の諸相

   神奈川県

   三井物産

   三菱各社

   東京市電気局

   大角力協会

   慶應義塾大学

   帝国学士院

   文芸界

   日記にみる流行

 第9章 外地における流行

   樺太

   朝鮮

   関東州

   台湾

   小括

 終章 総括・対策・教訓

   総括

   対策

   教訓

以上が著書の目次である。

まず、目につくのは「どこから始まったのか」である。

スペイン・インフルエンザであるからスペインだと思われるが、どうもそうではないらしい。本書では本格流行(1918年8月以降)の先触れとして、同年3月のアメリカのカンザス州から発生したものが大西洋や太平洋を3週間以内に渡り、ヨーロッパやアジアに到達したとする説をとる。スペインで罹患が増えたのは同年5月から6月であるが、スペインにとって不運だったのは、他のヨーロッパ主要国が第一次世界大戦で交戦中で、どの政府も自国でインフルエンザが流行していることを発表しなかったのに、中立国がゆえに流行の状態が世界に知れ渡ったことである。

 今回も武漢ウイルスと当初言われていたのが、WHOの命名でCOVID-19となったが、どこが発症元かという議論は繰り返されている。