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令和2年8月12日と欧州の感染「上」

  <8月12日>

軽症用ホテル、896室追加。東京都は12日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、軽症者・無症状者を受け入れる宿泊療養用のホテルを13日以降に896室追加すると発表した。すでに都内6施設で2148室を開設済みで、合計3044室となる。13日にアパホテル浅草田原町駅前で465室、17日東京虎ノ門東急REIホテルで431室それぞれ用意する。(日本経済新聞8月13日)

 

感染想定シミュレーション厚労省新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、全国の高齢者施設に対し、感染者が出た場合を想定したシミュレーションを8月中に行うよう求める方針を決めた。消毒液やマスクといった衛生用品の備蓄状況や職員の健康管理体制の点検も併せて要請。9月上旬までに都道府県や政令市を通じて実施状況の報告を求める。シミュレーションの内容として、濃厚接触者を個室に移す「生活空間の区分け」をどう行うかなどを想定しており職員や経営者の間で検討を求める。(同)

 

<<コロナ危機と欧州(朝日新聞)(8月5日)>

 

欧州の感染「上」

  <イタリア 州判断で明暗>

欧州で最初に新型コロナウイルスの感染爆発が起きたイタリアで、小さな村で始まった封じ込め策が国内の感染拡大防止策のモデルとなった。保健医療を管轄する州ごとの判断で、被害の大きさの明暗が分かれた実態も浮かび上がる。

 

ベネト州の州都ベネチアから西に約50キロ。「ボ」という小さな村が突然、世界の注目を集める「感染源」の一つとなった。

2月21日、村のバー兼宿屋で、客だった男性(78)が発症して入院、その日のうちに死亡した。ほかの客8人も陽性が確認された。そこはサッカー中継を見ながらカードゲームに興じる憩いの場であった。同月中旬の時点でイタリアでの新型コロナウイルスの感染者は、中国からローマにきた観光客夫婦の2人だけ。死亡した男性は、中国への渡航歴はない。イタリア国内で感染し死亡した最初のケースとなり、激震が走った。

 

ジュリアーノ・マルティーニ村長は、すぐにバーや公共施設を閉鎖。2日後には、村に通じる道路が封鎖され、人の出入りが禁じられた。州の動きも早かった。

患者が確認された当日にはルカ・ザイア州知事は、州のタスクフォースの専門家らを招集。「ボの全住民を検査する」と指示した。全住民へのウイルス検査は、「疑わしい症状のある人や、中国に渡航したことのある人が検査対象」とする当時の政府の方針に反していた。だが、州独自の判断で、実施を決めた。

2月23日から全住民対象の検査が始まった。最初の検査で村の人口の約3%の89人の陽性が確認された。そのうち43%が無症状であった。検査強化は州全体に広げ、陽性になった人はすぐ隔離。さらに新型コロナウイルス以外の病気で入院していた高齢者が退院する場合も、高齢者施設には戻さず自宅で隔離した。

 

こうした取り組みは、イタリア国内でベネト州が先行するモデルとなった。同州の感染者は8月3日までに約2万人、死者は約2千人だ。ほぼ同時期に感染者が確認され、その後感染爆発を起こした隣のロンバルディア州の感染者はベネト州の5倍、死者は8倍に上る。隣り合う州で明暗が分かれた。

ベネト州で感染症対策を務めたエンツォ・ライゼ医師は「ロンバルディア州では当初、検査が進まず、医療従事者がまず感染した。高齢者の中に無症状の感染者がまじり、高齢者施設にも感染を広げた。ウイルスが広がってから、ロックダウンで追いかけようとしても無理。無症状の人をあぶり出し、先回りしてウイルスと向き合うベネトモデルを採用しなかったのが、誤りだ」と話す。