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令和2年8月13日と欧州の感染「中」

  <8月13日>

8月死者 7月を上回る。8月になって新型コロナウイルスに感染して亡くなった人が増えている。13日までで死者は64人に上り、すでに7月の39人を大きく上回っている。13日までの1週間の死者は41人、4月初旬のころに匹敵し、前週から約1.4倍に増えた。全国の重症者も13日時点で203人と1カ月前の6倍となった。(朝日新聞8月14日)

 

東京慈恵会医科大学 浦島充佳教授。感染の場が接待を伴う飲食店などから友人や同僚などとの会食会や家庭内に移っている。高齢者に広がり院内・施設内の感染が増えることは避けたい。

感染経路不明者が増加傾向のため、クラスター追跡で感染を封じ込める対策は限界を超えたとみている。感染者が増えて保健所に大きな負担がかかっているとみられる。

感染者をいち早く見つけるためには検査体制の拡充が必要だ。陽性率が高い地域では対応が後手に回り、必要な人に十分な検査をできていない可能性がある。従来の診療を続ける医療機関とは別に新型コロナの検査と搬送先の振り分けを同時に担う検査拠点を各地域に増やし、大量に迅速に検査できる体制をつくるのがよい。

検査拠点では、医師の紹介状がなしで受診できるのが望ましい。

今は緊急事態宣言を出さずに、状況を注視する段階だ。重症者や死者が日に日に増えて医療が逼迫するようであれば、緊急事態宣言をだすべきだ。(日本経済新聞8月14日)

 

 

<<コロナ危機と世界(朝日新聞8月6日)>>

 

<欧州の感染「中」>

犠牲者 4割が老人ホーム。英国の死者は5万人に迫り、欧州で群を抜いている。なぜ、英国で新型コロナの被害がこれほど深刻になったのか、背景を探ると、政府の対応の遅れや不手際が浮き彫りになった。

 

3月17日、英国の国民保健サービス(NHS)は各病院に緊急要請を出した。「退院できる患者は全員退院させよ」「入院と救命措置のため3万床の収容能力を確保を」。

当時、英国ではまだ新型コロナが深刻な脅威だと受け止められず、繁華街を大勢の市民でにぎわっていた。緊急要請のきっかけはその前日に英大学の研究チームが発表した試算だ。「このままでは25万人が死亡し、医療機関もパンクする」。あまり深刻に考えていなかった政府にとって、衝撃的な内容だ。至急病床を確保しないとー。そのような危機感が緊急要請を促した。

 

要請を受けた病院の多くは、病床を空ける手っ取り早い措置として、入院中の高齢者を老人ホームに移送した。対象は4月15日までの1カ月弱で2万5千余人。認知症の人も少なくなかった。英国での新型コロナによる犠牲者の約4割を、老人ホームの入居者が占める。その一因はこの移送作戦にあったと多くの福祉関係者は指摘する。

当時のPCR検査の能力は1日5千人程度。移送の際もほとんど実施されず、病院からホームへとウイルスが運ばれたとみられる。その結果、全老人ホームの約4割に感染が広がった。

 

急な病床確保を英政府はなぜ求めたのか。

英ジョンソン政権は1月末、念願のEU離脱を実現させた。その達成感からか、ジョンズ首相の2月の休暇は12日間に達し、感染症対策に取り組む状態にはなかった。EU各国との情報交換や協力にも消極的になった。また、英国の感染症対策モデルは、インフルエンザを想定しており、新型コロナの被害を過小に見積もった。経済への影響を懸念する政府はロックダウンなど強硬な対応もためらった。こうした要素が対応に遅れたと多くの英メディアは分析する。首相も感染防止の意識が薄く、病院を訪問してコロナ患者と握手をしたりしていた。楽観的だっただけに、「25万人死亡」試算への驚きも大きかった。当時、イタリアやスペインでは患者が急増し、医療崩壊への懸念が高まっていた。英国も同様の事態に陥るのでは。病床確保の緊急要請が出された背景にはそのようなことがあったとみられる。

 

ただ、大きな犠牲を伴った病床確保は、ほとんど役には立たなかった。3~4月の高齢者移送などによって総計5万3700床が空いた。しかし、コロナ患者で埋まったのはピーク時でもその29%どまりだった。