歴史が面白い62

令和2年8月14日と欧州の感染「下」

  <8月14日>

無症状者検査で感染抑制。世界各国の新型コロナウイルスの感染状況などの比較で、無症状者への検査の増加が封じ込めのカギを握る実態が見えてきた。

英国は検査対象を広げ無症状からの感染拡大を抑制した。検査や感染防止が不徹底な日本や米国は感染拡大が続く。

英国は地域限定の都市封鎖を継続するとともに、増強した検査能力で対象者を拡大した。6月1日時点では7万7千件の検査で感染者は1500人となり、陽性率は2%だった。7月末時点では約12万8千件の検査で感染者は約500人に減って、陽性率は0.4%まで下がった。集団感染が発生した場所では積極的に検査し、無症状の感染者を見つけている。さらに介護施設職員は毎週検査を受け、タクシー運転手など感染リスクが高い人を対象に検査を実施している。

一方、米国は6月1日時点で検査は50万件で感染者は2万人余り陽性率4%、7月末時点は検査は80万件超で感染者は6万6千人陽性率8%と倍増した。ニューヨーク市は「トレーサー」を3000人雇い、濃厚接触者を探し出し感染を封じ込めたが、フロリダ州テキサス州などで感染拡大が続き、陽性率も上昇している地域がある。

検査の増加が感染抑制につながっていない状況は、スペイン、インド、南アフリカでも見られた。

日本も同様だ。6月1日時点で検査が約3千件で感染者は約40人陽性率1.4%、7月末時点で検査は1万5千件超で感染者は約1千人陽性率6.6%。日本は緊急事態宣言で感染者が減り、検査能力は増えたものの、英国のように検査対象を拡大しなかった。潜在化するウイルスを早期にみつけてクラスター発生を防ぐには、検査対象拡大が必要となる。(日本経済新聞8月15日)

 

東京の感染 新たに389人。東京都は14日、新型コロナウイルスの感染者が新たに389人確認されたと発表した。5日ぶりに300人を超えた。(同)

 

 

<<コロナ危機と世界(朝日新聞)(8月7日)>>

 

  <欧州の感染「下」>

新型コロナウイルスの感染拡大をめぐって当初、厳しい行動制限を避け続けた英国は、欧州で最も大きな被害を受けた。英政権が科学に従った対応としながら対策は後手に回り、検査も追いつかなかった実態が浮かび上がっている。

 

3月12日の記者会見でジョンソン首相は「率直に言わなければならない。より多くの家族が愛する人をなくすだろう」と、犠牲の拡大を許容するような発言をした。打ち出した対策は手洗いの徹底と、症状のある人の自宅療養などに限られていた。当時、ほかの欧州各国では学校閉鎖やスポーツ行事の中止に踏み切っていた。ジョンソン首相はし集会中止は「効果が薄い」と語り、「私たちは科学に従っている」と自信を見せた。

 

ようやく英国が行動規制に動き出したのは3月16日以降だ。この日、規制を強めなければ死者は25万人に上るという英大学の試算が示されたことがきっかけだ。ジョンソン首相は不要不急の移動は控え、できる限り在宅勤務に移行するよう呼びかけ始めた。学校の閉鎖や社交場への出入り自粛要請など次々に打ち出した。ロックダウンに踏み切ったのは23日だ。

 

多くの専門家らがロックダウンの遅れが被害拡大を招いたと指摘する。英政権が当初繰り返した「科学に基づいた」という根拠はどこから来たのか。英国の専門家会議「非常時科学諮問委員会」(SAGE)の議事録をたどると、厳しい措置に慎重な科学者の助言に従ったものがわかる。SAGEは3月10日。①症状がある本人の自主隔離➁同居人全員の自主隔離➂高齢者らを外部と遮断し防護、といった穏やかな措置を最大1カ月ほどかけて段階的に導入することを提案した。

 

SAGEの議事録を分析しているキングス・カレッジ・ロンドンのローレンス・フリードマン名誉教授は「政策判断の最終的な責任は政治家にある。・・・政治家は様々な選択肢があることを認識するべきだ。科学者には厳しい疑問をぶつけ、科学者が言い出さない隠れた選択肢を引き出さなければならなかった。科学者と政府がとても簡単に合意したことが問題だった。・・多くの問題は、検査件数を増やせないことに連なって起きた」と語った。

 

感染者を早く発見して隔離し、接触者を追跡して拡大を食い止める方策は、検査能力不足のために早々に選択肢から消えていた。高齢者の介護施設で被害が広がった際も、検査が十分に行われずに実態把握が遅れ、対応が滞った。

 

ジョンソン首相は7月15日の英会議で、欧州最悪の被害を出した経緯について独立した検査が必要だと認めた。