歴史が面白い111

令和2年10月3日

  <10月3日>

対コロナ 民間と分業カギ。新型コロナウイルスの感染者急増の際、日本は保健所が初期対応を担い、検査や入院調整、健康観察など大量の業務でパンク状態に陥った。各国の保健当局は一般の医療機関など民間と連携するケースが目立つ。感染の次の波に備え、企業を含めた民間と行政の分業体制の整備がカギになる。

ドイツには全国で約400の保健所がある。日本と同様、感染症や住民の健康対策など幅広い業務に対応しているが、保健所数は約10年前に比べ1割以上減ってきており人出不足が深刻という。公衆衛生サービスの常勤職員について2022年末までに5千人以上の増員を目指す。さらに民間の力を活用するため、今冬に向けて新たに発熱外来クリニックを設立する計画を打ち出した。

日本で行政機関である保健所が住民の健康対策を担うことになったのは、明治維新後、医療機関の少なさを補う必要があったためだ。死因トップだった結核対策や、健康対策や食品衛生など幅広い業務が求められた。その後は行政改革が求められ、1994年に地域保健法が施行されると統廃合が進んだ。約850か所あった保健所は2020年には約470か所まで減った。

もっとも、数の削減に応じた業務の外部委託といった効率化は思うように進んでいない。今年3月から4月に保健所での新型コロナウイルスの相談センターの運営状況を調査したところ、6割強は「保健所のみで対応」と回答。厚生労働省は相談業務や健康観察の外部委託を促しているものの「個人情報漏洩の不安もあり、自治体内の別部署の職員で対応している」(ある保健所職員)と慎重な対応を続ける例も目立つ。(日本経済新聞10月4日)

 

米政権・議員に感染者複数。米政権中枢のホワイトハウスの感染者が相次いでいる。トランプ政権が開いた行事がクラスターの発生源となった可能性がある。11月3日投票の大統領選が1カ月後に迫る中、トランプ大統領が入院するなど、米政治は混迷を深めている。

トランプ氏が感染した経路は不明だが、9月26日にホワイトハウスで開いた連邦最高裁判所の新判事の候補を紹介した行事がクラスターにつながったとの見方が浮上している。米メディアの話を総合すると、このイベントだけで2人上院議員を含む少なくとも6人の感染が明らかになった。これ以外にもホワイトハウス記者会からも3人の感染者がでた。トランプ氏をはじめ大半の出席者はマスクをつけず、社会的距離も確保していなかった。こうしたトランプ氏とその周辺のコロナに対する危機感の甘さが、ホワイトハウスを舞台にした感染拡大の一因になったのは否めない。(同)

 

「再選逆風」「株価崩れず」。2日のニューヨーク株式市場では株価が乱高下した。トランプ大統領新型コロナウイルスに感染し、政権運営や大統領選の不透明感が強まったためだ。トランプ氏の再選に逆風との見方も多い。中長期的には株価は崩れにくいとの見方も少なくない。「バイデン氏優勢の流れが強まれば、どちらが勝つかわからないという状況よりも不透明感が晴れる」と指摘する向きもある。(同)

 

(コメント)

保健所が1994年には847あったものが2020年には469に4割以上減少したという。1995年の保健所法が「地域保健法」に変わったことによる。保健所の体制強化の必要性は11年前の新型インフルエンザの時にすでに提言されていた。新型インフルエンザの国の対策を検証する専門家の検討会は、平成22年6月に国への提言を盛り込んだ報告書をまとめている。その中に「感染症危機管理に関わる体制強化」として、「発生時の対応を一層強化することが必要であり、地方自治体の保健所などの組織や人員体制の大幅な強化と人材の育成を進める必要がある。」と指摘していた。

保健所の数だけが問題ではなく、業務の中核を担う「保健師」の拡充が問題であるとのことである。濃厚接触者を特定するための患者への聞き取りや、感染経路を特定する調査など、中心的な業務は感染症の専門知識と経験のある「保健師」が不可欠だという。「保健師」の育成と退職している保健師の復帰の勧奨など優先順位を上げて取り組んでもらいたい。