歴史が面白い4

コロナの話は毎日、テレビや新聞に載っており、その時々はよくわかったつもりになっているが、後で振り返ると多分記憶がぼんやりとして、少し詳しく人に話せるものにはならないだろう。今まで起きた心に残るような大事件やイベントにおいてそうであったから今回もそのようになるに違いないと思い書き記しておきたいと考えた。

 武漢から順に記していきたい。

 

 世間に初めて発表されたのは、2019年12月31日武漢市衛生健康委員会が原因不明のウイルス性肺炎感染を発表した時だ。その時はあまりニュースにも大きく取り上げられておらず、ほとんどの人が知らなかった。新型コロナウイルス感染症対策専門会議メンバーの岡部信彦氏は、医者仲間から武漢で原因不明の肺炎が出ていると連絡があり、「年が明けたら大変なことになるかもしれない」と思い、川崎市の担当者にメールした。氏は川崎市健康安全研究所所長であるので川崎市の担当者に連絡したのだが、一般の人にとっては知る由もない。

 

 2020年1月9日、新型コロナウイルスを検知と報道された。バットウーマン(こうもり女)と呼ばれている石正麗氏によると、2019年12月30日武漢ウイルス研究所に謎めいた検体が届き、上海にいた石氏は呼び戻され、それからゲノム配列の分析を行い1月7日に病気の原因が新型コロナウイルスであることが確定したとのことだ。

その結果は2月3日付けNature誌オンライン版に発表された。

 

 1月11日武漢で初の死者と発表された。日経新聞では「中国の湖北省武漢市で発生した新型のコロナウイルスについて、同市の衛生健康委員会は11日、初めて死者が出たと発表した。1月10日時点で41人が肺炎を発症し、うち重症は7人で、2人が退院した。そのほかの患者の症状は安定しているという。3日以降、新たな発症者は確認されていない。当局によると、死亡した男性(61)は発症者が多い市中心部の海鮮市場でいつも商品を購入していた。9日の夜、呼吸不全で心臓が停止した。」これから、日本でも注目され始めた。実は後にわかるのだが、すべての発症者は2019年12月8日から2020年1月2日までの間に発症し、医療従事者への感染や人から人への感染ということは報道されていない。

 1月12日に専門家の意見として、ヒトヒト感染の過度の心配は不要。感染拡大の可能性は低い(忽那賢志(国立国際医療研究センター))とされていた。

 

 1月14日武漢当局はヒトヒト感染の可能性は排除できないと発表。小出しに情報開示がされてきた。

 

 1月15日国内初の感染者が見つかる。神奈川県の30代男性で、1月3日から発熱症状があり、6日に武漢市から日本に帰国した。医療機関を受診し、9日には39度の高熱となった。肺炎に悪化の兆しがあったことから10日から入院。症状は回復し、15日に退院し自宅療養となった。なぜこう早く新型ウイルスとわかったかというと、PCR法で診断したからという。かつては本物のウイルスがなければ検査の素ができなかったが、今は病原体のウイルス遺伝子の塩基配列がネット上などで公開されれば、それでいわば仮想のたんぱく質を合成し、病原体の有無の検査ができるという。ここは科学の進歩である。

 

 1月17日の専門家の意見として、動物を介してヒトに感染と考えられる(押谷仁(東北大))。ヒトヒト感染であっても、インフルエンザやはしかなどと比べて確率はとても低い(岡部信彦(川崎市健康安全研究所))。むやみに恐れる必要はない(忽那賢志))この段階では、パニックになることを用心したのだろう。落ち着かせるコメントが続く。

 

 1月20日中国の衛生当局の幹部が、ヒトヒト感染を明言した。知っていた事実を隠しおおせなくなったのである。

 

 1月21日安倍首相、関係閣僚会議開催。検疫の徹底と万全の情報収集を指示した。

同日、箱根の駄菓子屋店では「中国人お断り」貼り紙が出され話題になる。

専門家の意見として、ヒトヒト感染の可能性は指摘されていた。今後は感染のしやすさが焦点になる(忽那賢志)。動物からの感染だけで200人近い患者の発生を説明できない。変異で感染力が高まる可能性もある(濱田篤郎(東京医科大))。実際の患者は、中国当局の発表より1,2桁多い(押谷仁))。

中国から情報が不足しており専門家も意見が推測の域を出ない。

 

 1月22日台湾総統、団体客の武漢との出入りを中止と発表。米国も、武漢から入国可能な空港を制限。早くも手を打ち始める国も出てきた。

 

 1月23日WHO、緊急事態宣言を見送る。意見が2分したとのことだが後で禍根を残すことになる。

同日、武漢市は市民に「移動制限」を出す。23日午前10時から公共交通機関の運行を停止、市外に出る鉄道の駅や空港も閉鎖した。フィナンシャルタンムスは「中国、武漢市を隔離。」と表現した。隔離(quarantine)は40を意味するイタリア語に由来する言葉。海の都ベネチアがペストなどの疫病から市民を守るため、旅人を40日間市外に留め置いたことに由来する。コロナの流行で世界各国が隔離措置をとるようになったが、武漢の封じ込めはその先駆けである。

 

(コメント)

感染症の発症はその影響の大きさから政治的なマターになりやすい、特に情報統制をひく中国では真相がわからない。12月から1月にかけて特にWHOが緊急事態宣言を出すまでは公式ニュースだけではわからない。そして我々に得られる情報はなかったとさえ言える。なぜヒヒトからヒトへの感染が12月に始まったとみられるのに1月20日まで伏せられていたのか、その初動の遅れがパンデミックにつながっていったのは残念だ。今後も起きるであろう感染症の爆発的な感染の教訓にするために、有益な内部情報の開示が世界にとって必要だ。なぜなら、中国で起きたことは、アフリカでもアジアでもシベリアでもアマゾンでも、ほかの地域でも起きる可能性があるからだ。