歴史が面白い89

令和2年9月11日

  <9月11日>

コロナ・インフルPCR同時判定。スイス製薬大手のロシュは新型コロナウイルスと季節性インフルエンザウイルスを同時に判定できるPCR検査向け試薬を開発した。近く日本で承認申請する。医療機関や検査会社が持つロシュ製の検査装置と組み合わせることで、ウイルスの有無を高精度に判定。最大96人分を全自動で測定し、約3時間で結果が判明する。検査装置の価格は1台数千万円とみられる。国内に約40台が設置され、大規模病院や、H.U.グループホールディングスなどの検査会社が保有する。 ロシュの試薬は、感染が疑わしい患者を再検査する場合や、別の病気で入院している患者など高精度な検査が必要な場面で使われる見通しだ。

厚労省は今秋からは発熱患者に対して、まずかかりつけ医など地域の医療機関に相談することを求めている。かかりつけ医では、コロナを迅速に判定できる抗原検査やインフルの簡易検査キットで患者の感染を見極める。結果は陰性だが感染が疑われる場合などは、大規模病院でPCR検査など再検査を受けることになる。(日本経済新聞9月12日)

 

演劇・映画館 満席容認。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は11日、イベント開催制限を19日から緩めることや、「GO TO トラベル」の対策に東京都民と都内への旅行を10月1日から加えるとする政府の方針をおおむね了承した。一定の感染対策を取れば、演劇場や映画館内を満席にすることも容認した。

「GO TO イート」でネット予約した飲食に対するポイント還元事業を10月以降に始めることも了承した。大都市の歓楽街の感染拡大防止策を考える作業班を分科会につくることも決めた。

イベントの開催制限は、参加者の歓声・声援の有り無しと施設の収容人数から整理しなおした。クラッシックコンサートや古典芸能、演劇、落語などの催しのほか、遊園地や美術館、動植物園、映画館など参加者らが大声を出さない環境が確保できる施設は、収容人数いっぱいまで入場を認めるが人数制限は1万人以下の会場では5000人、1万人超の会場では収容人数の50%とする。必要に応じて、主催者らが参加者にマスクを配布して全員に着用させるなどの感染防止策をとることを条件とする。参加者の歓声、声援が想定されるイベントでは収容人数の半分まで。1万人を超える会場で行われるプロスポーツやロックコンサートなどは、収容人数の半分まであれば、参加者の上限はなくなる。(朝日新聞9月12日)

 

油断したら、また感染増。入院患者は2日時点で約5千人。6千人を超えていた8月中旬に比べて減ってきているが、600人以下になった6月下旬の8倍以上が入院している。人口呼吸器をつけた重症者は8月下旬に200人を超え、9月以降も160人前後で大きく減ってはいない。こうした状況で、大勢の人の移動を前提とした緩和を進めて大丈夫かとの声がある。政府の分科会は感染状況が悪化したら対象から除外することを検討するよう求めた。(同)

 

(コメント)

インフルエンザの流行の季節が来る。そしてGO TOやイベントの解禁の流れなど、感染リスクは今よりどうしても高まることになる。医療崩壊が心配になるが、気になる記事を目にした。介護施設を襲った「欧州コロナ大量死」(宮下洋一、文藝春秋10月号)だ。欧州のコロナによる死者が日本と比べかなり多い。スペインの死者も約2万9千人(8月28日)だ。

しかし、その約7割が病院ではなく、高齢者介護施設で治療も受けられず、隔離したまま亡くなっていたという。欧米では「トリアージは行わざるを得ない」という声は聞いていた。フランスの歴史人口学者、エマニュエル・ドットも「老人を救おうとして、若者や健常者を犠牲にしてはならない」と述べている。

それは、病院で通路まで患者があふれ、限られた人工呼吸器を誰が使うかという切羽詰まった場面などであると、思っていた。しかし、スペインでは高齢者の「病院搬送排除の基準」が存在し、高齢者の介護施設からは病院搬送拒否されていたのだ。集団感染が発生した介護施設では、感染した入所者が隔離され、病院搬送が行われないまま死を待った。つまり、高齢者が治療を受ける前の段階で息絶えていたという。介護施設で亡くなる高齢者が多いのは、英国やフランスでも同じだ。

もちろん、医療施設は今は余裕があるといっても、感染が拡大すればあっという間に感染者が増える。そうであるからと言って、医療を受けられる権利を、老人だからといって事前に制限することは許されないと思う。