令和3年8月10日
<8月10日>
接種7割では集団免疫困難。新型コロナウイルスのインド型(デルタ型)の広がりで、ワクチンによる集団免疫の獲得が遠のいている。従来型ウイルスでは人口の6~7割の接種が目安とされたが、デルタ型は8~9割に上がった公算が大きい。接種率を最大限に上げる努力を続けつつ、コロナとの共存も視野に入れた出口戦略が必要になる。
「国民の70%が接種しても、恐らく残りの30%が防御されることにはならない」。政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は7月29日、こう述べた。実際、人口の6~7割が2回接種したイスラエルやアイスランドでもデルタ型の感染者が増えている。日本政府によると国内で9日までに2回接種した人の割合は34%、月内の4割到達をめざす。
仮に集団免疫が達成できなくても、接種率を高める意義は大きい。入院や死亡を防ぐワクチンの効果はデルタ型でも90%以上と高い。完全ではないが感染を減らす効果も確認されている。
達成が難しくなった最大の理由はデルタ型の感染力の強さだ。その基本再生産数を英インペリアル・ロンドンは5~8程度、米疾病対策センター(CDC)は5~9程度と推定する。
おたふく風邪(基本再生産数4~7)や風疹(同5~7)並みか、水ぼうそう(水痘、同8~10)に近い。5と仮定するとしきい値は80%、6なら83%に上がる。
従来型ウイルスの基本再生産数は2.5~3程度と推定されていた2.5ならしきい値は人口の60%、3なら67%となる。これが集団免疫を獲得できる接種率の目安が「人口の6~7割」とされてきた根拠だ。
デルタ型に対してはワクチンの効果が下がる性質も影響する。イスラエルや英スコットランドでの調査によると、感染予防効果は米ファイザー製ワクチンの2回接種後で「64~79%」と英国型(アルファ型)の「90%以上」より低い。接種から時間がたつと感染や発症を防ぐ効果が下がる可能性も指摘されている。
(日本経済新聞8月11日)
(コメント)
尾身会長は人口の70%のワクチン接種では集団免疫には届かない、という。
感染力の強いインド型(デルタ型)が主流となったからだ。
おさらいだが、集団免疫となるしきい値が感染疫学で計算できる。
感染力の強さを表す基本再生産数を使うと
集団免疫のしきい値=(1ー1/基本再生産数)×100 %
例えば基本再生産数2.5なら
(1ー1/2.5)×100=(1-0.4)×100=60%
感染率が強いとしきい値は高くなるというわけだ。
インド型の基本再生産数は英国では5~8、米国では5~9とされた。
5の場合は80%、8なら87.5%、9なら89%にもなる。
これはどこの国でも達成できていない。
ここまでくると算式で表す世界ではない気がする。
限界値に近づくと理論は破綻するのはよくあることだ。
全員にワクチンを打てという誰でもわかる極端な世界になってしまう。
それよりも基本再生産数が5とか9とかいう感染力の強さが本当なら大変な事態だ。
おたふく風邪(基本再生産数4~7)
風疹(同5~7)
水ぼうそう(水痘、同8~10)
と同じということだ。
ここまで強くなると空気感染に近いとみるべきだ。
今までは接触感染と数メートルの飛沫感染に注意していたが、主流が空気中に漂う微小な飛沫になる。
衝立などは用をなさないことになる。
電車や地下鉄なども換気が十分でないと危ないということになる。
人が頻繁に行き来し、換気が十分にないところは注意を向けないといけないということではないか。
要は今は集団免疫の議論ではなく新たな感染対策だ。
3密対策に代わるものを分科会に期待したい。(了)
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(日本経済新聞8月11日)
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(日本経済新聞8月11日)
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(日本経済新聞8月11日)
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田村憲久厚労相が5日の閉会中審査で「肺炎症状のある人は、原則入院」と答弁した点について、方針通りに患者が入院できるのかと問われると、厚労省は「『そうだ』と答えられる材料を持ち合わせていない」とも述べた。(朝日新聞8月11日)